新築やリフォームをする時に後悔したくないと思うのは当たり前です。
必要な事はハウスメーカーや工務店が教えてくれる。そう思っていませんか?
実はハウスメーカーや工務店が教えてくれない、勧めてくれない事の中に
「やっておけば良かった」と言う事があります。
その1つが「引込開閉器盤(ひきこみかいへいきばん)」の取付です。
なぜなら、引込開閉器盤を付けることで「後から行う電気工事」が楽になる可能性があるからです。
「新築するのに後から電気工事する事なんて無いよ」と思われる方も居るかもしれませんが、急速にEV(電気自動車)が普及し始めている昨今において、あなたの家は車両台数分のEVコンセント(又はEV充電器)を設置しますか?
これらの設備を後から設置するのであれば、家の中に付けるホーム分電盤だけでは後々大幅な工事が必要になってしまうかもしれません。
電気工事士としての約20年の経験と、最新住宅トレンドを取り入れて住宅電気設計を行ってきた知識で、新築・リフォームでの「やっておけば良かった」を無くすお手伝いが出来ればと思います。
- 引込開閉器盤とは何なのか
- 引込開閉器盤を設置するメリット・デメリット
- どんな開閉器盤を選べば良いのか
結論は新築・リフォームするなら引込開閉器盤を設置するべきです。
なぜ必要なのか、解説していきましょう。
引込開閉器盤とは何なのか
そもそも引込開閉器盤とは電気のメーター(計器)の入れ物とお考え下さい。
普通の家に付いている計器ボックスはこのような形状です。
対して引込開閉器盤とはこの様な形状です。
計器ボックスが少し大きくなっただけですね。
主な違いとしては計器ボックスが計器だけを収納するのに対して、
引込開閉器盤は計器+ブレーカーを収納できるボックスになります。
なぜ引込開閉器盤を勧めてくれないのか
今回「引込開閉器盤があった方がいいよ」と言っているけど、それではなぜハウスメーカーや工務店、そこに付随する電気屋さんはこの事を教えてくれないのか。
それは価値観(情報)が古いからです。
引込開閉器盤は今までどんな時に使用されていたかと言うと、主に住宅では
ほぼこの時にのみ、使用されるものでした。
つまり引込点と家の中に設置する分電盤の位置関係を適切に設計できれば、付ける必要がない設備、それが引込開閉器盤だったのです。
これまでだと、引込開閉器盤を付ける=電気の設計が未熟
大袈裟に言えばこの様な価値観でした。
これでは知識をアップデートできていない人が勧めてくれるハズがありませんよね。
引込開閉器盤を設置するメリット・デメリット
引込開閉器盤を設置すると、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
使用例を交えてご紹介します。
その前に上記でも書いていますが、後から設備を増やすのに便利だとしています。
その後から増やす設備にどの様なものがあるでしょうか。
- EV充電器(EVコンセント)
- 蓄電池設備
- 太陽光発電設備
- 物置(100人乗っても大丈夫なあれ)・・・etc
これらの中にはホーム分電盤(家の中の分電盤)から増やした方が早い(安い)場合もあると思いますが、共通している項目があります。
それは屋外に設置する設備である事です。
屋外の設備に屋外の引込開閉器盤から配線を行うのが、施工的に容易なのは想像に難しくないと思います。
引込開閉器盤を設置するメリット
基本的には新しい設備を導入する際に、屋外に設置してある引込開閉器盤から給電する事ができるのが最大のメリットです。
新しい設備を増やすと言うことは、新しいブレーカーが必要になる場合が多いです。
(これは設置する設備のスペックにより異なる)
例えばEV充電器あれば最大40A(アンペア)のブレーカー設置が必要です。
この容量を屋内のホーム分電盤から給電しようとすると、ブレーカの設置スペースもですが配線するケーブルサイズも普通よりも太い為、施工が難しいです。
平屋建てなら天井裏が広い場合が多いので良いですが、一般的な2階建住宅だと天井裏は3〜40cm程度しかない事もあり施工面が高額になりがちです。
もちろん引込開閉器盤からの給電(配線)が難しい場合もあります。
例えば新しく設置する設備が引込開閉器盤の家を挟んで反対側である場合などは、配線距離も長くなり、ホーム分電盤(宅内)から配線するより高額になる等。
そんな時はホーム分電盤から配線すれば良いだけだよ
要は未来に増やす設備はどこに設置するかも分からないので、施工時の選択肢を増やせるのがメリットとなります。
引込開閉器盤を設置するデメリット
メリットは分かったけど、デメリットないの?
もちろんデメリットもあるから紹介するよ
一般的なメーターボックスですが、特に指定しない場合は無料な事が多いです。
そして指定したとしても、1万円程度で選べます。
この様なものが多いですね。
安いものを探せば5~6千円程度からです。
これに対して引込開閉器盤ですが、材質にもよりますが2.5万円〜7万円程度します。
普通のメーターボックスと比べると、どうしても高額になってしまいますね。
設置で費用が嵩むなら、こう考える人もいるかもしれません。
メーターボックスも設備を増やした時に考えればいいじゃん
実はメーターボックスは簡単には替える事ができないのです。
なぜなら、電力メーター(計器)の持ち主はあなたではないからです。
自分の家の壁に付いてるだから自分のでしょ?
勘違いしがちですが、電力メーターは電力会社の持ち物なのです。
(ややこしいですが、電力メーターの所有は電力会社ですが箱は利用者の所有物です)
つまり、電力メーターを触る(工事する)場合は電気工事店から各電力会社に申請を出して工事をする許可を取ります。
基本的にはこの申請も電気工事店に費用を払う必要があるので、引込開閉器盤の費用+申請費用+工事代が必要となります。
続いて見た目(美観)ですが、やはりPanasonicのスマートデザインシリーズなどに比べると大きくなるので、野暮ったい印象は拭えません。
ただ、これは設置する場所を目立たない場所にしてしまえば改善できます。
普段の生活で目にする機会の多い玄関周りに設置してしまうと「邪魔・野暮ったい」となりますが、勝手口付近や普段使用しない壁面に取り付けてしまえば、日常生活で目に入らないので気になりません。
以前であればメーターの検針員がメーターボックスを実際に見ていた為、人が入れない場所にメーターボックスを付けるのはNGでした。
しかし技術の進歩で現在一般的に使用されているメーターは「スマートメーター」になっています。
スマートメーターは通信機能を搭載しているため、実際に検針員が確認する必要がないので、目立ちにくい場所に設置する事も可能です(電気工事店と電力申請時に要検討)
今は技術の進歩でデメリットが少なくなってるよ
サイズ・材質はどうやって選べば良いのか
引込開閉器盤を導入する事にしたけど、どうやって選べばいいの?
サクッと結論を言うと次の2点
- 材質はステンレス製を選ぶ
- 大きさはメーカー推奨の基本的なサイズでOK
材質についてはステンレス一択と考えて良いでしょう。
鉄+塗装では5〜7年で錆が目立つようになってきます。
(錆が出たからと言って問題はないですが、錆びにくいに越したことはないです)
ステンレス製であってもご覧の様に塗装も可能ですので、外壁に合わせた色合いにする事もできます。
次にサイズですが、引込開閉器盤を勧めるのは中にブレーカーを設置する為です。
ブレーカーは次の3つくらいが収ればいいでしょう。
- 基本となるメインブレーカー(75A程度)
- EV充電器用(40A程度)
- 蓄電池・太陽光設備用(30A程度)
これ以上増えるのであれば幹線サイズがUPしてしまいますので、そもそも引込線(引込開閉器盤に入っているケーブル)のサイズや計器の大きさも変わってしまうので、その時は引込開閉器盤を大きくして対応しましょう。
まとめ
今回は「引込開閉器盤」についてご紹介してきました。
- 新築・リフォームでは引込開閉器盤を設置しよう
- 材質はステンレス一択(指定色塗装も可能)
- サイズは横○cm×高さ○cmが目安
引込開閉器盤を設置すれば全ての機器増設に対応できる訳ではありません。
引込開閉器盤から遠かったり(家の反対側等)地面をコンクリート施工している場合も、埋設配管が簡単に行えないので増設が難しいです。
ですが、電気回路を増やす選択肢がホーム分電盤(家の中)からのみより、増設工事の際の選択肢が増える事は間違いないです。
1回の工事で引込開閉器盤のコスト程度簡単に元が取れるでしょう。
新築・リフォームの際に、初めからEV充電器や蓄電池を設置する場合も、引込開閉器盤から給電する事も勿論できます。
その場合は埋設配管で施工すれば、配管は地中を通るので見た目もスッキリします。
大きな引込開閉器盤を設置するのであれば、引込注(コンクリート製や金属製など種類があります)に設置する事も可能です。
この場合は家の外壁に何も付かないので、むしろ美観向上に繋がりますね。
少しでも本記事が、みんなの為になると幸いです。
ではまた!